ため息をついた日
ちょっと照れくさそうにまた耳を赤くしているけれど、真剣な、覚悟を決めた顔をしている。

「俺さ、優愛に甘え過ぎだったよな。ダメなんだよ。お前といると、つい…さ。だから、ごめん。優愛、俺…」

話ながら徐々に伏し目がちになっていた諒哉は、そこまで言うと顔を上げ、驚いて目を見開いた。
ぐっと歯を食いしばりながら、優愛がボロボロと涙をこぼしていたから。

自分でも同じ事を考えていたのに、実際に諒哉の口から自分といるとダメと言われると、どんなに堪えようとしても涙が溢れてきて止まらなかった。

「嫌だよ、別れたくないよ!私も離れた方が良いのかもって思ったけど、でももう諒哉が側にいないなんて考えられないよ!」

小さな子どもが泣くようにしゃくり上げている優愛を見て、今度は諒哉がため息をついた。
「お前なぁ…。」
少しの怒りと呆れを織り混ぜたような声でそう言うと、箱ティッシュを掴んで優愛の側に来た。ちょっと乱暴に涙と鼻水を拭く諒哉。
メイクをしたまま大泣きした上、無理やりティッシュで拭かれた優愛の顔は酷い状態だったのだろう。ちょっと待ってろと言うように優愛の頭をポンポンと軽くたたいて、ポイントメイクを落とすのに使っているシートを取りにいった。
いつ見ていたのだろうか。諒哉は、普段優愛がするように優しく押さえるように化粧を落としていく。それが終わると、どうやら一緒に持ってきていたらしい化粧水まで使ってくれた。
「とりあえずこれでいいだろ。」
諒哉の行動に驚きつつも、優愛はこくんと頷いた。

座ったままの優愛を、諒哉はぎゅっと抱きしめた。
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