ため息をついた日
手をつないでデートしたり、こうやって抱きしめられたり、恋人らしい事がなかったからか、優愛はドキドキした。別れ話をされそうだったにも関わらず、つい甘い言葉を期待する。だけど、頭の上から聞こえる諒哉の声は明らかに怒っていた。
「お前、いい加減にしろよ。俺は今もこれからも別れるつもりなんてこれっぽっちもないからな!それなのに離れた方が良いと思ったとか言いやがって。」
言葉と比例するように強く力が入る諒哉の腕の中で、優愛は反論した。
「でも、私といるとダメになるって言ったじゃない!」
「ダメになるとは言ってない!ダメなんだって言ったんだ。」
「同じでしょ!」
「同じじゃない!」
諒哉はまたため息をついた。
「優愛といると、つい気が緩むんだよ。大変そうなのもわかっていたけど、それでも色々としてくれる優愛に俺は愛されているんだって確認してたんだ。甘えだし、迷惑だよな。優愛は別れる事も考えていたんだから。」
段々と言葉尻が弱くなる諒哉。
「私、さっき諒哉が側にいないなんて考えられないって言ったよ?」
弱気な台詞に驚いて、慌ててもう一度言う。
「そ、そうか…。」
「そうだよ。」

だけど優愛はまだ気になっていた。
別れるつもりはないと言ってくれたことは素直に嬉しかった。けれど、さっきの話のながれでは"私といるとダメ"→"ごめん"→"別れる"となるような気がする。
暗い表情でまた黙った優愛に気づいたのだろう。諒哉は椅子に座る優愛の足元に膝をついて言った。
「さっきの話の続きをさせて。」
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