恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「わぁお、ラブラブ中の人達みーっけ!!」
突然の大きな声に振り返ると、同期である成瀬早紀(なるせさき)がニヤニヤしながら近付いてきた。
笹山に魅了されていない数少ない女性社員。
そして、私の一番仲の良い友人でもあるけど。
いくらこのフロアの人達がお昼休みで出払ってるとはいえ、早紀の冗談笑えないから。
昨日あんな事を言われた後では余計に気になる。
「成瀬、発言が小学生並み」
笹山は、片眉をくいっと上げて早紀を軽く睨む。
「ふん、笹山のクセに生意気」
湿気の多い日には泣きたくなるような猫っ毛の私とは違い、サラサラのストレートヘアが良く似合う美人で『総務の華』と呼ばれている彼女。
でも、実は凄い毒舌の持ち主。
笹山といい勝負なのだ。
「まぁまぁ、こんな所で毒を撒き散らし合わなくても。早紀は、もう御飯終わったの?」
笹山と早紀の会話はいつもブラックな雰囲気を醸し出している。
早紀曰く感性が合わないのだとか。
「そう、それで来たのよ。里沙っちにメールしたけど返事がないし」
「あ、ごめん。見てないや」
もう永井さんのメールを気にする必要もないし、とバックの底に沈めたままだ。
「ねぇ里沙っちぃ~、永井さんどうなってるの?時間がある時は一緒にお昼してたじゃない。なんであのお子様がぶら下がっているのかしら」