恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
笹山のくだらないって言う鬼のような呟きが聞こえた。



言うべき言葉が見付からないのは、何故だか胸が痛い所為。


私は、取り繕うような笑みを浮かべる。

「私は今更だけどさ、彼女にはそんなSキャラ駄目だよ」

「何の話しだよ」

「総務だか管理だか知らないけど、最新の彼女が出来たって聞いた。昔は、会社の娘(こ)は煩わしいって言ってたけど、そんなこと考えない位の娘なんでしょ?」


以前、どんな綺麗な女性社員に告白されても、全く付き合う気配のない笹山に、どうして?と聞いたことがある。

その時はいつもの意地悪そうな笑顔で、会社の女なんて煩わしいとバッサリ切り捨てていた。

確かに笹山なら例えば道を歩いてるだけで、出逢いなんかそこら辺中に転がっているんだろう。


昔の台詞を持ち出すと、笹山は心底不愉快そうな顔をした。

「噂の出所は何処」

「何よ、出所なんて何処でもいいじゃない。めでたいことだし」


わたしが小首を傾げると笹山が口の端で笑った。

……目が怖いんですけど。


笹山はワイシャツの胸ポケットから煙草を取り出したものの、指で弄ぶ。

フロア内は禁煙だからだ。


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