恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
3.この気持ちを何て呼ぶ?
「頭から水って、やるじゃないの、里沙っち~」

約束通り早紀の事情聴取を受けた私は、グラスの中の赤ワインをグッと飲み干した。

「そんなに笑わないで、落ち込んでるんだから」

「あら、そうなの?」

「だって、フラれたんだよ?相手から付き合おうって言われたのに。それって、付き合ってみたらイマイチだったって事でしょ?すでに後釜まで見付けて……なんか人格全否定された感じ」

私は2人の空のグラスにワインを注ぎながら、ため息を吐いた。



早紀の選んだお店は、半分個室っぽくなっているイタリアンの居酒屋さん。

他の客の声もBGM程度にしか聞こえない。

プライバシーも適度に守られて話しやすい雰囲気、これを狙ったのかしら。


「今まであえて聞かなかったけれど、里沙はどうして永井さんと付き合うことにしたの?あの会社の懇親会まで知らなかったでしょ、永井さんなんて」


そう、確かに。

きっかけは、9月に行われたホテルでの懇親会。

この大がかりな飲み会は、8月に就任した新社長の鶴の一声で決まった全社員参加の行事だった。

組織が大きくなれば、同じ社内でも顔すら知らないなんて当たり前になってしまう。

だから社長曰く、横の繋がりを作れということで。


そんな会で永井さんは私に声を掛けてきた。

< 14 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop