恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「お前がやる気なら、高松さんに話し通してやる。フォローもしてやる。……余計なことなんて考えられないようにしてやるよ」
そう言って浮かべた笹山の微笑は、いつになく妖艶で悪魔的だった。
その微笑に惑わされた私はつい首を縦に振ってしまい、過酷な日々に首を突っ込むこととなったのだけれど。
確かに他のことなんて考えられなかったな。
唯一仕事以外で思い出したのは、奴の悪魔な笑みに謀られたってこと位。
でも、それで立ち直れたのも確かなことで。
そうやって何本かの仕事をこなして、クライアントとの打ち合わせもスムーズに出来るようになった頃の帰り道。
車を運転しながら、チームリーダーの高松さんがそういえば、と話し掛けてきた。
「玉井ちゃんも最近、仕事が様になってきたねぇ」
「そんな、まだまだですよ。ようやく緊張しないで、お客様と話しが出来る様になった程度なので」
高松さんはチーム唯一の既婚者で優しいお兄さんタイプ。
クライアントとのやり取りを聞いていると、穏やかな雰囲気で場を和ませつつ上手に話しを進めていく、見習いたい先輩の1人だ。