恋のためらい~S系同期に誘惑されて~

クリスマスイブか。

今日は仕事が終わったら、ケーキを受取りに行かないと。

先輩のお店も忙しいんだろうなぁ。



熱いカプチーノを飲み込んだ唇からふぅと、息が漏れる。

……不思議なもので。

独りに慣れていた時は平気だったのに。

少しでも人と寄り添う温もりを味わってしまうと、かえって寂しい。

最近忘れていたような感情に、自嘲的な笑みが漏れてしまう。


行き交う人々をただ瞳に映して、ぼんやり窓の外を眺めていると、見知った背中を発見した。



笹山と……隣には可愛らしい女の子。


あ、管理課の。


永井さんの言葉と共に、早紀と同じ制服姿の彼女が頭に浮かんだ。

私服の彼女はキャメル色のショートダッフルがよく似合う。

細い足を包むプリーツのミニスカートは犯罪的に可愛く見えた。

自分の装いと見比べるまでもなく。

今日もチャコールグレーのパンツスーツと黒いカシミヤコート。

……色が無い。


比べてどうする、私。


そうか、そうか、一緒に通勤してたのか。

いつも私より早く来てるもんね。


笹山のプライベートなんて、私が知らなくて当たり前のこと。


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