恋のためらい~S系同期に誘惑されて~

東野物産の担当者が別口の会議にも出席しなくてはならないらしく、アポイントメントがとれたのは15時だった。

笹山と担当者が意見を交わしながら、修正箇所の確認作業をしていく。

東野物産の担当者はニコニコしながら話す50代の経営管理部部長の永田さんと、私と同世代位に思われる男性の石野さんだ。

もっぱら話しを進めているのはこの部長で、かなりの曲者だ。

笑いながら難題を押し付けてくる。

結局のところバグ取りレベルの話しではなく、変更したい箇所があるのだとか。

簡単に変更とか微調整とかって言うけど簡単じゃないことばかり。

クライアントは神様なので文句はグッと飲み込んだけど。
 
打合わせが終る頃には、空は暗くなっていた。

東野物産本社の10階にある会議室の窓からは、街路樹に取り付けたイルミネーションが見下ろせた。


「お2人共、こんな時間まですまなかったね」


会議室の時計をちらりと見やると、18時50分を指していた。

食えない笑顔を永田さんに向けられる。


「いいえ、こちらこそ納期日を延ばして頂けて助かります」


笹山に続いて私も頭を下げた。

とは言っても、延ばされたのは今週中だった納期日が年明けに跨いだだけだ。

私達の年末年始がどうなるかは神のみぞ知る、だ。

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