恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「永井さんじゃ、里沙っちの恋愛恐怖症は治んないと思う」
タマがそういう関係を怖がっているのは知っていた。
3人で飲みに行った時や何かにつけて成瀬がタマに恋愛の話を向けても、私はもう当分良いよ、と思いっ切り尻込みしてたから。
だから、安心してたのかもな。
他の男のモンになっちまうとか、考えてもいなかった。
「そんなの、本人が良いならそれで良いんじゃね?」
「あんたがそんなチキンだとはね。顔良いだけのチキンて使えない」
容赦なく吐かれる毒に、笑うしかない。
「お前男だったら良かったのにな。そうしたら、タマのこと自分の女に出来ただろ」
「でも私は女だし、幸い女で良かったって思ってるの。ことに最近ね」
えらく優雅に笑って見せる成瀬に驚く。
「成瀬がそんな顔して笑うなんて、気持ち悪りぃ」
「あんたに向けた笑顔じゃないわ。ここからが本題なの。私はあんたに協力する、だからあんたも私に協力して」
俺が協力?
……理解出来ねぇ。
俺が訝しげな顔をすると、今度は策士の笑みを浮かべる。
「私の情報網を甘く見ないで、友野社長の従兄弟君」
「……最重要機密でもないが、公表してることでもない」
俺は、冷めた目で成瀬を見た。