恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「俺が中学生の頃、ばあさまが亡くなったんだ。日頃俺を不憫に思っていたばあさまが、俺に財産を残すような遺言状を作ってたから、それがまた火種になっちまった。他の誰にも手出し出来ないよう、伯父が俺の後見人として指名されていて、自分に何の権利も無いことを知った俺の母親は、伯父を逆恨みしたんだ。……じいさまにさんざん甘やかされて育って、自分では働く気も無いのに友野の金と権力ばかりを欲しがってる。でも所詮、友野の名前の中でしか生きられねぇ、そんな女なんだよ」
くだらないだろ、と呟いた笹山の声は言葉とは裏腹に、哀しそうだった。
「今回、速人兄が帰って来たことで、俺の価値が無くなったことに気が付いて、今度はグループ会社の社長令嬢とくっ付けようと画策し始めやがった。それがあの南って娘」
「婚約……するって言った」
笹山は大きな溜息を吐いた。
「する訳ねぇだろうが。大体、俺の母親に何を吹き込まれたのか知らねぇけど、ハメられた食事に行っただけで、恋人だなんだって、周りに吹聴してやがった。……俺の上っ面しか見てねぇくせに。思い込みが激しくて、丁重にお断りするのに多少時間が掛かっただけだ。そのお陰で、ずっと面倒だったから避けて来た俺の母親にもガツンと喰らわしてやったし、な」
笹山は、母親に喰らわした詳しい内容までは言わなかったけれど、今はそれでも良い。
ただ、ずっと笹山の苗字を名乗り続けているのは、友野の力なんていらないという意思表示のつもりだった、と教えてくれた。
くだらないだろ、と呟いた笹山の声は言葉とは裏腹に、哀しそうだった。
「今回、速人兄が帰って来たことで、俺の価値が無くなったことに気が付いて、今度はグループ会社の社長令嬢とくっ付けようと画策し始めやがった。それがあの南って娘」
「婚約……するって言った」
笹山は大きな溜息を吐いた。
「する訳ねぇだろうが。大体、俺の母親に何を吹き込まれたのか知らねぇけど、ハメられた食事に行っただけで、恋人だなんだって、周りに吹聴してやがった。……俺の上っ面しか見てねぇくせに。思い込みが激しくて、丁重にお断りするのに多少時間が掛かっただけだ。そのお陰で、ずっと面倒だったから避けて来た俺の母親にもガツンと喰らわしてやったし、な」
笹山は、母親に喰らわした詳しい内容までは言わなかったけれど、今はそれでも良い。
ただ、ずっと笹山の苗字を名乗り続けているのは、友野の力なんていらないという意思表示のつもりだった、と教えてくれた。