恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「……俺は何にも執着しないで生きて来たんだ。その方が楽だったからな。でも」
笹山は言葉を切ると、私を包み込むように抱いていた腕を解いて、両手で頬にそっと触れた。
「お前だけは違う。タマのことだけは、誰にも譲れねぇ」
「……そんなこと、今まで一度も」
「怖いのはお前だけじゃねぇってことだよ、タマ」
笹山の形の良い薄い唇が、ゆっくり言葉を紡ぎ出す。
「……ずっと好きだったんだぜ」
私はその唇に手を伸ばして触れていた。
このぼんやりとした灯りの中で、本物かどうかを確かめる様に。
酔っ払って見た夢オチとかって無いよね?
ああ、大事なことを言ってなかった。
「ごめん、笹山。……私、お酒臭い」
私の脳内が目まぐるしく動いてる様子を見て、笹山は口の端を歪めた。
「お前、レスポンス悪すぎだろ」
「うう、ごめん。……笹山の家のこととか、頭が追い付かなくて。……私も…いつからかなんて分かんない。けど……気が付いたら笹山のこと好きになってた」
血が繋がっていたって、分かり合えるとは限らない。
笹山は、どんな思いで今まで生きて来たのかな。
「……私の知らない笹山をもっと知りたい」
たどたどしい言葉を口にした瞬間、私は笹山の体に覆い尽くされていた。
今度は身体中の血が逆流しそうな位、激しい口付けを受けながら。