恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
最終章 ためらいの向う側
結局、居間で一夜を過ごし、毛布に包まったまま目が覚めたのは、正午に果てしなく近い頃。

目覚まし時計の役目を果たしたのは、笹山がテーブルの近くに置いてくれたらしい、私のバッグの中の鈍い振動だった。

私は腰に絡んだままの笹山の腕を引きはがし、自分のバッグへと体を伸ばした。

そして片手でバッグの中をかき混ぜてスマホを取り出すと、また毛布の中へ戻る。

部屋にはずっとエアコンがついていたものの、空気は少しひんやりしていて、毛布の中が心地良い。

私は気怠い体で、1人ではない体温を噛み締める。

……暖かい。

笹山が起きないのを良いことに1人ニマニマしながら、スマホの着信履歴をたどった。

早紀と実家からの着信が各々2件、笹山の着信が4件、そしてみーちゃん先輩からの着信とメールが1件。

「……なんだか賑やかしいような」

私の呟きに反応するように、隣に転がっている笹山の体がピクリと動く。

笹山の顔を覗くと、彼の長い睫毛も動き出し、ゆっくりと目が開いた。

うわぁ。

寝起きなのに何でこんな綺麗なんだろう。

その途端、自分の酷い状態を想像し、ギャッと声を出して毛布を被った。

頭はもしゃもしゃな上に、きっと飲み過ぎた所為で目は腫れぼったいし、あぁ化粧すら落としてない、悲惨な状況。


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