恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
笹山は片眉を上げて私を見下ろすと、ようやく体を起した。

彼は上半身を晒して、すぐさまテーブルの上の煙草に手を伸ばす。

そして煙草と口に銜えたまま、私に視線を移した。

「早く出ろ」

あ、そうだった。

つい、笹山の動作に見惚れてしまう、自分に赤面した。

「も、もしもし」


電話の相手は早紀だった。


『ようやく繋がった。で、里沙が電話に出なかったのは、笹山に捕まったってことでしょ。もしかして色男は、まだそこにいるのかしら?』

「早紀~ぃ」

……察しが良すぎですって。

『良かったじゃない。この間は里沙がピャアピャア泣いた後に、呑気な笹山の顔見たら腹が立って、ついお節介しそうになったけれど。あれは不覚だったわ』

「ピャアピャアって私は猫かっ、もう。……でも、ありがと。えっと、それで、早紀は、あの」

何て聞いたら良いのか言葉を選択出来ずにいると、電話の向こうから早紀の笑い声が漏れてきた。

『いいのよ、そんなに気を遣わなくて。私がケリを付けたいのは、友野社長。里沙っちには、あんな軽い言い方しちゃったけれど』

いつもクールに見せてる早紀が、実は面倒見が良くて温かい人だってこと位、私は知っている。

フラれて落ち込んでる私を、元気付けて笑わせようとしてくれてたことも。
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