恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「……邪魔してたんだよ。波風立てようと思ってなきゃ、そんなにちょくちょく誘うわけねぇだろ」

お前は鈍いから全然気付いて無かったけど、としれっとした口調で言った。

「じゃあ、早紀は知ってたの?その、笹山の」

「勿論。成瀬は俺をチキンだヘタレだって煽りやがるし。挙句、仕事納めの日に、御丁寧にラッピングまでして、そいつを寄越したんだぜ?夕べ煙草を探してる時に、鞄の奥から出て来て開けてみたら、俺よりも用意周到」


……早紀の奴、気を回し過ぎだよ。


早紀は、私の奥底にあった複雑な想いに、ずっと気付いていたんだ。

私が怖がっていることも、見ない振りをしていたことも。


「俺も会社辞める前に、成瀬に恩を売っとかねぇと」

「えっ?会社、ど、どうして?!何でそんな大事なことを、サラッと流すのよっ」

私は彼の言葉に、少なからずショックを受けた。

「昨日、話しを付けて来たんだ。今の仕事も嫌じゃねぇけど、最近は既存ソフトのカスタマイズが主になってきてるだろ?俺は、ゼロからシステム開発する会社を起したいんだ。今の時代だからこそ、そういうニーズもあるしな。で、ばあさまの遺産って友野ソリューションの株なんだけどよ。ばあさまから貰ったものに手を付けるの、ずっと躊躇してたけど、持つべき奴が持てば良いと思ってさ。速人兄に譲って、代わりに出資してもらう段取り組んだんだ」
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