恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「煙草臭いから」

「……聞かないでよ」


笹山の影がゆっくりと近付く。

自分の体も催眠術に掛かったみたいに、笹山の胸元へと引き寄せられて行った。


笹山が誘うように何度もキスを繰り返し、2人のキスを交わす湿った音だけが静かな部屋に響いた。

さっき電話をするためにTVを消してしまったから、余計に恥ずかしい。

ああそれで、みーちゃん先輩の声がスマホ越しに漏れたんだ。

なんて、そんなことを考える余裕があったのも最初のうちだけで、後は笹山に翻弄されるのみだった。

キスだけじゃ終わんない、と、ありとあらゆる曲線を撫で付けられ、唇で愛でられ、私の身体は悲鳴を上げる。


「……っムリ、だ…め」


笹山に何回もジェットコースターに乗せられた。

際限まで感覚を持ち上げられて、下げられて。

早紀の言う通り、積年の鬱憤が溜まっているのは確からしく、笹山は終わった後にも「まだ抱き足らない」とだけ囁いた。


彼は並外れた体力と女を喜ばせるテクニックを持っているらしい。

経験値の少ない私にだって分かる位。

こっちが嫉妬するわっと、心の中でボヤきつつ笹山の腕に包まれた。


「悪りー、やり過ぎた」

「やらしいなぁ」

「馬鹿。そっちの意味じゃねぇよ。キスのつもりが、お前があんまり可愛い声で鳴くから」

「……どっちみちエッチ臭い」

笹山は私の鼻の頭にキスを一つ落とし、笑みを浮かべた。

「欲しいのが手に入った気分って悪くねぇな。……なぁ、このまま一緒に年越しするか?」




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