恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
笹山は自分と同じスタートを切ったとは思えない程、仕事の出来る男で。
本格的に業務に携わるようになると、彼はハイペースで仕事をこなす様になった。
疑問はすぐに先輩に質問し、納得いかないところは上司を捕まえて議論する。
入社2年目には、顧客との打ち合わせでも自分の意見を飛ばし、尚且つ相手のニーズをも掴んで来ようになっていた。
そして、黙々と仕事をこなし、実績を上げる。
私はむしろ、見た目と違ったストイックなまでの仕事への姿勢に、尊敬の念を抱いている。
本当に手強くて一目置かずにはいられない。
……とは言っても今日の私には、淀んだ思考しか廻らなかった。
笹山がこんなに仕事の出来るイケメンじゃなかったら、永井さんは気にしなかったんじゃないんだろうか、とか。
「タマ。何、俺の脚に見惚れてんだよ」
「自分で言うな。気色悪い」
「なんだ、元気じゃん。朝から変な顔してるから、二日酔いかと思った。ほら、これやるよ」
私の机の上には野菜ジュース。
二日酔いの時、いつも飲んでるヤツだ。
こんな些細な優しさが、胸をキュンとさせる。
げっ、笹山にキュンって。
うわっイヤだ、私相当弱ってるわ。
私は笹山の顔を見上げた。