恋のためらい~S系同期に誘惑されて~

「ありがとう。……変な顔はよけいだと思うけど」


私がモゴモゴお礼を言うと、笹山はフッと目を細めて笑いながらパソコンの画面を覗き込んだ。


「これ、前に言ってた先輩のケーキ屋?」



去年クリスマスケーキの話しをしたんだっけ。

美味しかったけど、3日に渡って食べ続けたケーキ。

あの時の笹山は、来年も相手がいなかったら一緒に食ってやるって、意地悪そうな俺様口調で言ってたけど。



この男がクリスマスに空いてるわけもなく、私だって邪魔くさい勘違い女と思われたくはない。

ましてや同情なんて御免だ。



いくら仲が良くたって、私の中にもボーダーラインは存在する。

同期の、同僚としての、線引き。



私にだってあるんだよ、永井さん。



「なんだよ、お前やっぱおかしくね?」



うっ。

フラれた後遺症。


また脳みそがお散歩してた。

笹山の切れ長の瞳が私の顔を覗き込む。


……顔近すぎ。
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