私のファーストキスもらって下さい。
「ふぅ。」
えみの家の近くのヘンテコなオブジェにすがって、一息つく。
カバンから折り畳みの鏡を出して、髪が変になってないか、小鼻がテカってないかチェックする。
よし。大丈夫。
あ、たまには色つきのグロス塗っちゃおう。
学校が終わると私はまっすぐ待ち合わせの場所に来た。
えみは何だか居残りらしい。
私が誠二くんと待ち合わせしてるのを朝言ったから、先に帰っていいよって言ってくれた。
「~♪」
あんまり化粧をしてない私の身だしなみチェックはすぐ終わっちゃうわけで…
何気なく空を見上げながら、好きなグループの曲を口ずさんでいた。
誠二くんと共通の好きなグループなんだよね。
だから私は特別好きなんだ。
「あ、その曲俺いいなって思ってた~。」
「あ、誠二くんっ。」
声のする方を振り向くと、仕事終わりのスーツ姿の誠二くん。
夏はクールビズだからネクタイなし。
ちぇー、勿体ない。
誠二くんのネクタイを緩める時のあの仕草、
見とれちゃうくらいカッコイイのなぁ。
「遅くなってごめん。
暑いとこ待たしちゃったな。」
「ううん。お疲れ様です。」
私がそう言うと、誠二くんはハハッて笑って私の頭をくしゃっと撫でた。
「鈴ちゃんも、暑い中勉強お疲れさん。」
今年の残暑は結構厳しい。
でも、誠二くんのその不意打ちが私にはもっと困っちゃうよ。
「この前のCD返さなきゃなと思って。」
「うん。あれ、結構いいよね。」
「おぅ。最高だったね…というか、とりあえず家ん中入るかぁ。」
誠二くんに誘われて、そのまま家へ入った。