私のファーストキスもらって下さい。
「でも、鈴ちゃんこの前の朝…」
誠二くんはそこまで言って、“いや、何でもない”ってまた視線を逸らした。
この前の朝…って、私が起こしに言った時のことだよね。
『起きないと、キスしちゃうよ。』なんて、言い逃げしたあの朝。
寝ぼけてたよね、誠二くん。
…もしかして、起きてた?
横顔を見つめて、そんな風に考え出すと今更ながら、恥ずかしくなった。
「誠二くんって昔からよく寝てるよね。」
「確かに、だなぁ。」
「この前の朝もなかなか起きなかったもんね。
私、起こしに来たんだよ?」
「ん~、朝は特に弱いんだよな俺。
でも、さすがに目が覚めたよ。
鈴ちゃんが可愛い冗談、言い逃げしたから。」
「///////」
や、やっぱりっ。
覚えてるっ。
ど、どうしよ。
めちゃくちゃ恥ずかしい。。
反射的に顔が真っ赤になってるだろう。
「ほんと、鈴ちゃん昔から天然で可愛いことするよな。」
思い出したように笑う誠二くん。
昔はそうだったかもしれないけど、
今は違うんだよ。
「違うよ。
あの日の朝は、冗談なんかじゃないよ。」
「え?」
隣の私の声がさっきまでと違って、真剣なことに気づいた誠二くん。
不思議そうに私を見つめた。
目が見れなくて、ちょっと視線をずらした。
「誠二くんにドキドキして欲しくて、ちょっとイタズラしたの。」
素直に言っちゃった。
もう取り消しできない。
「もう妹扱いはイヤだよ。
…私、もう子どもじゃないよ…?」
ずっとずっと、言いたくて言えなかったこと。
やっと言えた。
誠二くんは驚いたまま…なんて言っていいか分からないみたいで、ただ瞬きするだけ。
そうだよね、驚くのも無理ないよね。
だって、今までずっと妹のように思ってた私がこんなこと言い出すんだもん。