私のファーストキスもらって下さい。





「知らなかったのは当然だよ。
だって…必死に隠してたんだもん。」




そうだよ。
誠二くんには早紀さんがいて、気持ちがバレたら誠二くんが困るのは分かってたからさ。



でも、拓さんからしたら私って分かりやすいって言ってた。



それに気づかない誠二くんは、ちょっと鈍感なんだよ。





「ずぅーっと、好きだったんだよ。」





もう言っちゃったから。
何回でも言っちゃうよ。
好きだよって。



でも、思ってた通り。




「ごめんね。」



「何で鈴ちゃんが謝るの?」




だって…




「誠二くん、困った顔…してる。」




ねぇねぇ、
私が好きって言うとやっぱり困る?




「困ってないよ。」



「嘘だよ…困ってる。」




顔を逸らす誠二くんの横顔を見つめて、やっぱり泣きそうになる。



えみとせっかく、この恋頑張ろうねって約束したばかりなのに。



もうダメだよ。。




「誠二くんには早紀さんがいる。
でも、好きって気持ちはどうにもならなかったんだ。だから…この気持ち、伝えられて良かった。」




そうだ。
好きって伝えられただけで、幸せだよ。



いつか忘れられる日が来たとしても、
後悔はないよ。




なんて、1人心の中で整理をつけてると黙り込んでいた誠二くんが不意に…




「ごめん、今まで鈴ちゃんをそういう風に見てなかったから…ちょっと…いや、結構ビックリしててさ、何て言うか…その…」




誠二くんはそこまで言うと、また黙ってしまった。



ありがとう。
もういいよ、誠二くん。




「そうだよね、妹みたいなもんだよね。
大丈夫、私別にいいの。ただ、気持ち伝えられて、良かった。だから、またいつものようにお兄ちゃんみたいに頼るね!」




精いっぱい笑顔。
じゃないと、誠二くんはいつまでたっても困り顔だから。




ほら、いつもみたいに『鈴ちゃん』って優しく笑ってよ。








< 117 / 171 >

この作品をシェア

pagetop