私のファーストキスもらって下さい。
誠二くんはいつもの優しい笑みを向けてはくれなかった。
その変わりに…
「鈴ちゃん…そんな風に笑うなよ。
ったく…ほっとけなくなるだろ?」
そう意地悪に笑った。
そして、グッと距離が近くなったと思ったら、
おでこをくっつけた。
その距離、3センチ。
今までで一番近くに誠二くんを感じる。
「俺、どうしたらいい?」
そんな事聞くなんて、ずるいよ。
「私、誠二くんとこのままの関係でいいの。
…だから、1つわがまま聞いて欲しい。」
ずっと、ずっと、ずっと、
小さい頃から思っていたあの想い。
きっと私が誠二くんに聞いて欲しい、
最初で最後のすごーいわがまま。
「ん?わがまま?」
優しく低めの誠二くんの声。
その声を聞くだけで胸がキュンキュンする。
はぁ。こんなに近いのに、私の心の中のわがまま、伝わらないかなぁ。
ちゃんと口で言わなきゃ…だよね。
「あの、ね…」
どうしよ、どうしよ…恥ずかしいよ。
ドキドキだよっ。
「ん?」
少し離れて私の顔を覗き込む誠二くんを
勇気を出して見つめた。
「あのね、
私のファーストキス…貰ってくださいっ。。」
言えたっ。
でも、やっぱり目は見れなかった。
瞑ってしまった目を開けられないまま、じっと反応を待つ。
はぁ。
こんなわがまま、さすがにダメだよね。
だって、誠二くんには早紀さんがいるもんね。
こんな事しちゃ、ダメだよね…。