私のファーストキスもらって下さい。
「まぁいいわ。あなたに誠二を取られるなんてあり得ないわ。」
早紀さんは、そう捨て台詞を残して路肩に停めていた車に颯爽と乗り込み、去っていった。
車の噴かす音がやけに耳に残りながら、しばらくボーッとしてしてしまっていた。
すると、何処からか…
「鈴…?」
「えみ?えみっ…。。」
見ると、心配そうな顔をしたえみが立っていた。
えみの顔を見てしまった途端に、さっきまで平気だった心が折れてしまった。
思わず抱きつくと、えみは優しくぎゅっとしてくれた。
忘れていたかのように叩かれた左頬がピリピリと痛み出したら、もう我慢ができなかった。
「鈴、大丈夫?」
「うぅ、えみぃ…(泣)。。」
甘えたい。
もう、今はえみに甘えたい。
泣き出してしまった私を見て、ずっと黙っていた誠二くんが…
「とりあえず中、入ろう。」
そう言うのが聞こえた。
それからえみに支えらて、家の中に入った。
2階のえみの部屋へ上がると、私はそのままぺたんと座り込んだ。
「飲み物持ってくるから、待ってて。」
「ん。」
鼻声で頷くと、えみは優しく笑って下へ降りていった。
一人になった部屋でまた涙が出た。
誠二くん…どうしてるかな。
どう思ってるかな…。
「はぁ。」
考え出したらきりがない。
私はえみが戻ってくるまでため息ばかりついていた。