私のファーストキスもらって下さい。
「鈴ちゃん、」
「?」
「鈴ちゃんの気持ちは
ちゃんと受け取ったから、俺。」
誠二くん…。
この優しさがちょっと挫けかけた心を癒やしくれた。
「正直言って…昨日鈴ちゃんの気持ち知って、何か答えるのは簡単だったかもしれないけど、俺には出来なかった。」
そうだよね、
『俺には早紀がいるから無理だよ』
そう言ってしまえば簡単だったかもしれない。
「突然だったから、ビックリしたのもあるけど…ちゃんと考えたいからさ。鈴ちゃんがあんなに真剣に想ってくれてたから。」
“だから少し待てる?”
そう続けた誠二くんに私は笑って頷いて見せた。
それから、“お互い今はいつも通りに接すること”っていう約束をした。
気まずいのは嫌だしね。
そんな気遣いができる誠二くんのことがまた、好きになった。
思わずそれを口にしてしまった私。
誠二くんは照れたように鼻の頭をかいて、
『鈴ちゃん、そういう可愛いこと言うのもしばらくは禁止します。』
って、言った。
だって、好きって思っちゃったんだもん。
それから2人とも遅刻ギリギリで慌てて家を出た。
途中まで一緒に走って、息切れする誠二くんにいぢわるで…
「おじさんみたいだよ。」
って言ってみたら、
「こら、意地悪言わないっ。」
って頭をクシャッてした。
嫌でもキュンってしながら、私は学校へ走った。
ばかばか。
誠二くんこそ、キュンってさせるの禁止っ!