私のファーストキスもらって下さい。





ーーーーーー




「ありがとーございましたぁ。」




コーヒーの香りが漂う店内で、笑顔でお客さんを見送った。



ここは、ビル街から少し抜けたところにある小さなコーヒーショップ&カフェ。



オレンジ色の照明がとても落ち着いた雰囲気の隠れ家的なお店。



さて、どうして私がそのお店で働いているかと言うと…




「いやー、鈴が来てくれて良かったよ。」




カウンターの奥からそう言って出てきたのは、
黒いシャツに黒いエプロンのちょっと恐そうなお兄さん。



ゆるいパーマのかかった長い髪は後ろで結んでいて、顔は何気にイケメンなのだ。




「ユーさん、いつも突然連絡するんだもん。
女子高生も忙しいだからねー。」



「デートとか??」



「そうそう!」



「うわぁ…あの鈴がそんなふしだらな子になってしまったのか…」



「何変な想像してるのー!!」




怒って軽く殴りにいった私をひょいと避けて、
カウンターに寄りかかって笑った、私がユーさんと呼ぶこの人、



結城 聖史(ユウキ セイジ)さん、私のお母さんの弟。
だから、私の叔父さんになる人。



小さい時もよく可愛がってくれて、高校生になってからはこうしてユーさんが店長のこのコーヒーショップでたまに助っ人としてバイトしたりしてるんだ。



今回もその助っ人依頼というわけ。





「鈴ちゃん、彼氏出来たの??」




とても明るい声で聞かれて振り返ると、そこにはもう雑誌から抜け出してきたモデルさんみたいな美人。




「いないですよぉ。
私も瞳さんみたいに幸せいっぱいになりたい。」



「何で、鈴ちゃん可愛いし、いい子だよ?
そんな鈴ちゃんをほっとくクラスの男子達が信じられないよ。」




そう言ってため息をついたのは、瞳(ヒトミ)さん。
大学生でここのバイトさん。
この人目当てにコーヒーを買いに来るお客さんもたくさんいるのを私は知ってる。



そして、




「店長、もうclose出しときましたよ。
さ、片付け②。」




ちょっと雰囲気が早紀さんと似ているこの大人美人なお方は、瑠美(ルミ)さん。


ここのスタッフで…




「あ、また瑠美ちゃん、店長って呼んだ。
聖史って呼ぶ約束だよ!」



「仕事とプライベートは別です。」




そう、ユーさんの彼女さん。
こんな美人で優しい彼女さんがいるなんて、
ユーさんも角におけないよね。



あ、何で叔父さんのことをユーさんと私が呼んでるかと言うと、名前が誰かさんと一緒で何となく照れちゃうから…私が。



『叔父さんは却下』と本人の希望により、
ユーさんと呼ぶようになったのでした。











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