私のファーストキスもらって下さい。
「ちょ、ちょっと瞳さんっ?」
「ん?」
「入っちゃったらまずいですよ!」
「大丈夫だよー。」
ビルの中へ入るとそこはどこかの高級ホテルのような広いホールがあって…
瞳さんに手を引かれながら、キョロキョロ辺りを見渡しながら歩いていると…
前の方から黒いサングラスにスーツ姿の恐そうなガタイないい男の人がこちらに向かって歩いて来た!
「大丈夫じゃないですって、瞳さんっ。
ほら、前から恐そうな人がっ…」
「大丈夫だよー。」
ニコニコ笑いながら、そう説明する瞳さんとは裏腹に私は慌てていた。
すると、
「お久しぶりでこざいます、瞳様。」
あの恐そうなガタイのいい男の人は、何故か瞳さんにそう丁寧に言うと深くお辞儀をした。
え?
ぽかんとする私をよそに二人の会話は進んでいた。
「お越しになるということでしたら、お出迎えさせていただきましたものを…」
「もう。その敬語止めてくださいよ。
それに、私なんかにお出迎えなんていりませんよ。」
「いえ、でも社長から申し付けられておりますので…」
何だろう、このセレブな会話。
瞳さんって、そんなにすごい人なのかな。
普通の大学生じゃないの?
と、そこへ
「おー。瞳ちゃーん。会いたかったよー。」
「あ、孝信さんだ。…わっ。」
またしても突然現れた、今度はダンディーで私のお父さんくらいの年齢の男の人。
その人は、瞳さんに駆け寄ると思いきり抱きついた。
ええ??
この方は??
「わしの可愛いスイートハニー。」
「孝信さ…苦しっ…」
ダンディーな紳士の熱いハグに困る瞳さんを助けることも出来ずあたふたしていると…
「おい、変態オヤジ。瞳から離れろ。」
そこへ颯爽と現れた、誰もが振り返るくらいのイケメン様。
その人は、ダンディーな紳士を引き離すと瞳さんを胸に引き寄せた。
やっと私が見たことのある人が現れてくれた。
それは、
「孝幸、ありがとー。」
「ん。」
瞳さんの超ラブラブな彼氏さんの孝幸さん。
「先に帰ってて良かったんだぞ?」
「ううん、たまにはここに来たかったし。
それに、今日は…」
ラブラブな二人に見とれていると、
「おや、見ない顔だね。
制服…う~ん、高校生かぁ。いいね、よし。
おじ様とデートに出掛けないかい?」
「え、あの、えっと、」
不意に肩を抱かれたかと思うと、ふわっと大人な香水の香りとそんなキザな台詞が私を包み込んだ。
さっきのダンディーな紳士。
「社長、さすがに高校生の子を口説かないで下さい。」
でも、すかさず後ろに控えていた恐そうなガタイのいい男の人にひっぺがされていた。