私のファーストキスもらって下さい。
ーーーーーーー………
「え、何でっ……!?」
覚悟を決めて専務室のドアを開けると、
何故かそこにいたのは…
「ご、ごめんね、誠二くん。
お仕事中なのに…。」
高級革張りのソファーにちょこんと座る、
制服姿の鈴ちゃんの姿があった。
状況が理解できず、俺は暫く入り口あたりで突っ立っていた。
何で鈴ちゃんが会社に?
というか、何で専務室に??
「ははは。」
「わぁ、鈴ちゃんの王子イケメンっ!」
「キャー////瞳さんっ。王子って言っちゃダメ!」
立ち尽くす俺に構わず、その場にいる皆は誰も和やかな雰囲気で、俺はますます混乱。
そんな俺に塚本専務はククッと笑って“とりあえず座って” とソファーの方へ勧められた。
とりあえず、勧められるがままにソファーに腰を下ろす。
隣にはやっぱり学校帰りらしい制服姿の鈴ちゃん。
またスカート短い。
後で注意しとかないと…って、そんな事今はどうでもよくて!
「鈴ちゃん、どうしてここに?」
「えっと、それは…」
小さな声で聞くと、困ったように眉を下げて笑う鈴ちゃん。
すると、向かい側のソファーに座っていた女性…鈴ちゃんより年上なモデルのような綺麗な人が、代わりに話し出した。
「初めましてっ。私、鈴ちゃんのバイト仲間でお友達の沖田 瞳といいます。
実は、今日鈴ちゃんをここに連れてきたのは、私なんです。ビックリさせてしまって、ごめんなさい。」
「は、はぁ。」
「王じ…あ、えっと佑月さんの事は、鈴ちゃんから何度かお話で伺ってたので…それで、せっかくなのでちょっとサプライズを…」
「そう、だったんですか…えっと、」
鈴ちゃんのバイト仲間で、お友達…
でも、何でここに?
「ホントに瞳もサプライズとか好きだよな。
誰に似たんだか。」
「誰でしょー?」
「まぁ、佑月くんが残業してくれてたから、サプライズ成功だけどな。」
「そうだよね。でも、孝幸っ。
残業ばっかりさせちゃダメだよ。」
「はい。反省してます。」
え?塚本専務と何でこんなにフレンドリーに?
あれ?というか、名前で呼び合ってる?
「鈴ちゃん、この二人って…?」
こそっと隣の鈴ちゃんに聞いてみた。
すると、鈴ちゃんは…
「瞳さんは孝幸さんの婚約者さん。 」
それから俺は慌てて挨拶をした。
俺、何で呼ばれたんだろ…