私のファーストキスもらって下さい。
暫く黙ったまま、俺の独り言のような話を聞いていた塚本専務は煙草の火を消すと…
「あの子を守ってやりたい…
…それは、兄のような存在として?
それとも、男として?」
塚本専務の核心をついた問いに、俺は即答できないまま口をきつく閉じた。
鈴ちゃんの気持ちを知らなかったあの頃だったら…いや、早紀との関係に満足していたら、きっと、俺はすぐに答えることができていたと思う。
「美条は完璧に近い女性だ。でも、それでも弱いところも必ずある。一番近くにいた君なら、少しは見えただろ?」
「はい。」
早紀も甘えてくる時だってあった。
その時は、華奢な身体を力強く抱き締めた。
俺の胸に頬を寄せる早紀をいとおしく思った。
「君がそばにいて守りたい…愛したいと思うのは、誰だろうな。」
俺はそう聞いた塚本専務に視線を向ける。
「きっと誰も傷つけずに答えを出すなんて、
出来ないよ。でも、後悔はするな。」
「…はい、ありがとうございます。」
「いや、俺は何も出来ない。
あ、でも、君が答えを出した後のフォロー位ならいくらでもするよ。…君は優秀な人材だからな。」
そう言って塚本専務は、目を細めて微笑んだ。
同性相手に優しく微笑まれて、こんなに安心するなんて…
恐るべし、世界最強の男。(瞳さん曰く)
そして、塚本専務は一足先に部屋の中へ入っていった。