私のファーストキスもらって下さい。




暫く、二人とも何も話さず手を繋いだままでいた。



そして、




「俺、今から早紀と話してくる。」




真剣な眼差しで私にそう告げた誠二くん。
それからこう続けた。




「ちゃんと話がつくまで…
“待ってろ”って言ってもいい?」




聞かなくてもいいのに。
誠二くんらしい。


私は何だかおかしくてクスッと笑って頷いた。




「じゃあ、もうちょっと待ってろ。」



「うん。待ってる。…ずっと待ってる。」




“待ってろ”


その言葉があるなら、私はずっと待つよ。


誠二くんの言葉を信じて待つ。



瞳さんがいつだったか話してくれた時に言ってた。




『好きな人の言葉なら、信じれる。
信じて待ってれば、きっとその幸せは叶う。』




瞳さんは長い間、外国に行ってしまった孝幸さんとの約束を信じてずっと待ってたんだって。



ほんとにロマンチックだよね。
瞳さん、つらかっただろうなぁ。


でも、今の二人があるのはそんな約束があったからなんだろうね。




「誠二くん、好きっ。」




もう好きって気持ちが溢れちゃった。




「あーもう、あんまり煽らないの。」



「え?」



「キス、したくなる。」



「き、キスっ…/////」




そっと頬に触れられ、誠二くんの指先が私の下唇をなぞる。


そんな、え、ついに…??なんて、慌てる私。

でも、




「フフッ、でもまだ…おあずけな。
早紀と話がつくまで。」




ドキドキの最高潮に達した私は、頭から湯気が出るんじゃないかってくらい顔を真っ赤にしてかろうじて頷いていた。




「嬉しいな、
鈴ちゃんのファーストキス、もらえるの。」



「もう、恥ずかしいからその話終わりっ!」




耐えきれず、私は先に歩き始めた。
でも、右手は誠二くんと手を繋いだまま。



誠二くん、ほんと意地悪。
でも、そういうとこ…好き。





< 144 / 171 >

この作品をシェア

pagetop