私のファーストキスもらって下さい。
「来年は俺は貰えそうにないかなぁ。」
白い息を吐きながら、誠二くんはそんなことを言って笑った。
どうして?って聞くと…
「だって、高校生だろー?好きな人とか彼氏とかにあげるようになるじゃん。」
あげるよ。彼氏じゃないけど好きな人にあげるよ。
誠二くんに、あげるよ?
「“ついで”でいいから俺にもちょうだいね?
家族から貰うやつって俺唯一、食うからさ。」
あ…
私のチョコも家族チョコとおんなじかぁ…
そっか。
そうだよね、なに期待してるんだろ、
私のバカ。
誠二くんの優しさに淡い期待を持っていた私は胸がチクッとした。
いくら近くにいても誠二くんと私の恋愛は遠いんだ。
好きって口にしたら、今のこの距離も遠くなっちゃう。
やっぱりこの気持ちはずっと心の隅っこの隅っこに置いておかないと。
「ほら、鈴ちゃん。ちゃんと暖かくして。」
でも、こうやって甘い優しさを私にしてくれる誠二くんはずるいよ。
巻いてくれた白と薄いグレーのストライプ柄のマフラー。
誠二くんの暖かさを感じる。
誠二くんの優しい匂いがする。
「あ、クンクンしない!臭いとか言われたら、俺もショックだから。」
「臭くないよ。…ありがと。
誠二くん、優しいね。」
私がマフラーに顔を埋めて言うと、誠二くんはふにゃって優しく笑って私の頭を撫でた。
きゅんとした。
でも、ぎゅってなった。
こんなほろ苦~いバレンタインになってしまったんだ。
拓さんに報告したら、
「あいつ…無意識に悪い男だな…。」
なんて、呟いてた。