私のファーストキスもらって下さい。




ーーーーーーーー


そして、日曜日。


たまたま定休日になったこともあって、拓さんが買い物に付き合ってくれることになった。


待ち合わせの場所にいくと、私服姿の頭にタオルを巻いてない拓さんがすでに待ってた。



「拓さん!」


「おぅ。来たか、片想い娘。」


「もうっ、拓さん!」


「はは。ウソウソ!」


拓さんって、
私の片想いをちょっと楽しんでる?


こっちは真剣で、つらいのに。



「あれ?えみは?」



むくれる私にいつも隣にいるえみの事を聞いてきた。


実はえみ、風邪気味らしく…外出禁止令が出てしまったのです。


だから、今日は私だけになっちゃったわけで。



「あいつでも風邪引くんだなぁ。
よし、じゃあ今日は2人でデートだな!」


「……デートじゃないし。」


「あーもー、ふてんな。ほら、今日はいっぱい話聞いてやるから。」



ご機嫌ななめな私に拓さんは慌てながら、頭をぽんぽんしてそう言った。

ふん。どーせ、面白がるんだ。



「どーせ、私の片想いを面白がって楽しむんでしょー。いいもん、拓さんには喋んないもん。」



買い物に連れてってもらうくせに、なんて私は恩知らずなんだ。


でも、中学生の恋をからかってる拓さんが悪いもん。



「バカ。バカ鈴。」


「バカ拓さん。」


「とりあえず、車乗れ。」



渋々、拓さんの車の助手席に乗り込む。

私がシートベルトをカチッとはめるのを見届けると、拓さんはエンジンをかけた。


それからもう一度、私の頭に手を置いた。



「バカ鈴、人が一生懸命恋してんのに、
それをふざけて面白がる奴がどこにいんだ?」



声がいつもより真剣なことに気づいて、私は拓さんを見た。


真面目な顔した拓さんがいた。



「ほんとに面白がってない?」


「ああ。」



拓さん、ごめん。ありがと。
いつも、真剣に話聞いてくれてたんだね。



「拓さん、いい人。」



何だか照れ臭くなっちゃって、それだけ。


すると、拓さんは“当たり前、今わかったのか?”なんて言って、車を発進させた。



「俺ほど女の子の味方はいねーぞ?」


「でも、拓さん、モテないじゃん。」


「………」


「なんで?」



あれ?今の言っちゃだめなやつだった?



「もう、誠二に言ってやる。お前が好きだって言ってやる!」


「え、ちょ、拓さん!」



本気じゃないのはわかる。


でも、拓さんはいい人だけど意地悪だ。








< 19 / 171 >

この作品をシェア

pagetop