私のファーストキスもらって下さい。
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そして、日曜日。
たまたま定休日になったこともあって、拓さんが買い物に付き合ってくれることになった。
待ち合わせの場所にいくと、私服姿の頭にタオルを巻いてない拓さんがすでに待ってた。
「拓さん!」
「おぅ。来たか、片想い娘。」
「もうっ、拓さん!」
「はは。ウソウソ!」
拓さんって、
私の片想いをちょっと楽しんでる?
こっちは真剣で、つらいのに。
「あれ?えみは?」
むくれる私にいつも隣にいるえみの事を聞いてきた。
実はえみ、風邪気味らしく…外出禁止令が出てしまったのです。
だから、今日は私だけになっちゃったわけで。
「あいつでも風邪引くんだなぁ。
よし、じゃあ今日は2人でデートだな!」
「……デートじゃないし。」
「あーもー、ふてんな。ほら、今日はいっぱい話聞いてやるから。」
ご機嫌ななめな私に拓さんは慌てながら、頭をぽんぽんしてそう言った。
ふん。どーせ、面白がるんだ。
「どーせ、私の片想いを面白がって楽しむんでしょー。いいもん、拓さんには喋んないもん。」
買い物に連れてってもらうくせに、なんて私は恩知らずなんだ。
でも、中学生の恋をからかってる拓さんが悪いもん。
「バカ。バカ鈴。」
「バカ拓さん。」
「とりあえず、車乗れ。」
渋々、拓さんの車の助手席に乗り込む。
私がシートベルトをカチッとはめるのを見届けると、拓さんはエンジンをかけた。
それからもう一度、私の頭に手を置いた。
「バカ鈴、人が一生懸命恋してんのに、
それをふざけて面白がる奴がどこにいんだ?」
声がいつもより真剣なことに気づいて、私は拓さんを見た。
真面目な顔した拓さんがいた。
「ほんとに面白がってない?」
「ああ。」
拓さん、ごめん。ありがと。
いつも、真剣に話聞いてくれてたんだね。
「拓さん、いい人。」
何だか照れ臭くなっちゃって、それだけ。
すると、拓さんは“当たり前、今わかったのか?”なんて言って、車を発進させた。
「俺ほど女の子の味方はいねーぞ?」
「でも、拓さん、モテないじゃん。」
「………」
「なんで?」
あれ?今の言っちゃだめなやつだった?
「もう、誠二に言ってやる。お前が好きだって言ってやる!」
「え、ちょ、拓さん!」
本気じゃないのはわかる。
でも、拓さんはいい人だけど意地悪だ。