私のファーストキスもらって下さい。
「お前は人を嫌いになれるような性格か?」
拓さん…
だてに小さい頃から私を見てるだけある。
どんなに頑張ったって、私は早紀さんを嫌いにはなれないよ。きっと。
「早紀さんと…誠二くん、お似合いだよね…」
鼻をすすりながら、ちょっと笑う。
「まぁな。美男美女カップル…だな。」
「…ひどい。正直に言わないでよ。」
ムッとして拓さんを見ると、拓さんはいつもの調子でガハハって笑った。
もう…慰めてるの?いぢめてるの?
「ま、でも俺はお前のほうが可愛いげあると思うけどな!」
「子どもっぽいってこと?」
「いや、そーじゃなくて。」
可愛いげって…
早紀さんに勝てるとこなんてないのに。
「なんつーか、あの彼女は完璧すぎるっつーか、守ってやんなきゃっていうのを感じないってーか。」
隣で首をかしげる私を見て、拓さんは“だからな”と続けた。
「お前にだって、あの彼女より勝ってるところがあるってことだ。現に、誠二はお前をどういう風に見てるかは別にして、心配していつも可愛がってくれんだろ?」
「うん。」
誠二くんは、私に優しい。
心配して、いつも気にかけてくれて、
可愛がってくれる。
でも、その優しいとこがちょっとツラい時があるんだけどね。
「そこんとこは、自信持っていいんじゃねーか?お前は誠二と特別な距離にいるんだから。」
拓さんはそう私に言い切ると、行くぞってドアを開けた。
つられて車から降りたのはいいんだけど、
「た、拓さん、どこ行くの?」
「ここのシフォンケーキ、1回は食っとかないとと思ってな。」
そう言って指差したお店は1ヶ月くらい前にオープンした新しいケーキ屋さんだった。
ケーキ屋さんの駐車場だったんだ。
それから2人でシフォンケーキを食べて、
家まで送ってもらった。
ちゃんと、えみのお土産を忘れず買って。
拓さんは帰り際、
「お前だって、誠二と美男美女カップルになれるぞ!」
なんて、恥ずかしい捨て台詞を残して颯爽と帰っていった。