私のファーストキスもらって下さい。



誠二くんだったらいいなぁ…



なんて、心の中で願っちゃったりして。



こらこら、無謀な妄想はしないしない。



はぁ…と吐き出した息が広くなって、空に消えていくのをぼ~っと見上げた。


と、その時、突然視界が遮られた。


え、え、え、何?


一瞬、何なのか分からなかったけど、
私の視界を遮ったのが人の手だって気づいたのは直ぐだった。


だって、温かい。



「だーれだ?」



耳元で聞こえた声。
『だーれだ。』…


そんな優しい声で言っちゃったら、
誰かなんてすぐ分かっちゃうよ。


私はドキドキしながら答えた。



「せーじくん。」



私がそう呼ぶと、目隠ししていた温かい手は離れて…振り返ると、そこにはやっぱり…



「こら。目隠しされていい子にしてたら危ないでしょ。変なやつだったらどーする?」



呆れたような笑みで、私のおでこを優しくツンッとする誠二くんがいた。


そんなにいちいちドキドキしながら、
触れたおでこを擦る。



「だって、誠二くんの手だって分かったもん。
声だって、すぐわかっちゃう。」



嘘だろって思われちゃうかもしれないけど、
何となく直感で嫌な手じゃないって思ったんだ。


すると、誠二くんはアハハって小さく笑うと…




「鈴ちゃん、そんな可愛いこと
他の男子に言ったら大変だよ?」


「なんで?」


「だって、男だったらホレちゃうよ?
そんな可愛いこと言われたら。」


「えっ!?」



そ、そうなの?
困るよ、そんな。


でも、誠二くんもちょっとは可愛いって思ってくれたのかな?



「もう言わない。絶対他の男子に言わない。」



言わない。
絶っ対、他の男子にそんなこと言わないよ!


でも、誠二くんには言うよ?
可愛いことか分かんないけど、ちゃんと素直に言うよ?





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