私のファーストキスもらって下さい。
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あれから、誠二くんとショッピングモールにやって来た。
いつだったか拓さんと行った時、ばったり誠二くん達に会ったあのショッピングモール。
「えみと出掛けても、あいつ食うことしか考えてないからつまんないだよな。」
なんて愚痴りながら、おっきなブタちゃんのぬいぐるみを棚から取り上げて、抱き抱える誠二くん。
「………ッりたい。」
「ん?」
やばっ。
今思ってたこと口に出しかけてたっ。
聞こえなくて良かった…
“今の誠二くんを写真にとりたい。”
ぬいぐるみを抱っこする誠二くんにきゅんきゅんしながら頭の中のシャッターを切る。
「こいつ、ちょっとえみに似てない?」
「確かに。抱き心地良さそうだもんね。」
こういう妹思いな誠二くんが好きだなぁ。
「鈴ちゃんが食いしん坊じゃなくて良かった。
」
ブタちゃんを棚に戻しながら、誠二くんがしみじみ呟く。
なんで?って聞くと、誠二くんはちょっと照れくさそうにこう言った。
「俺、妹とこうやって買い物したりとか、
結構やりたかったんだよね。」
“妹と”
今だけは聞き逃そう。
だって、こうやって誠二くんと買い物出来てるんだから。
「あ、別に妹大好きとかシスコンとかじゃないから。キモいとか言ったら、ショック。」
慌てる誠二くんを見て、ちょっと笑っちゃった。
だって、誠二くん…大人だけど、こう言うところ昔から変わんないんだもん。
「あ、ほら。誠二くん、あっち行こ!」
「ちょっと待って、俺、こいつ気になる。」
ブタちゃんのぬいぐるみの所からなかなか離れられない誠二くん。
ちょっと勇気を出して、手を握って引っ張ってみた。
心臓が…壊れちゃいそうなくらいドキドキ。
でも、普通に握り返されて…
「…私だけかぁ。」
聞こえないように、呟いた。
手を握っても、ドキドキしたり、意識しちゃうのは…やっぱり私だけ。