私のファーストキスもらって下さい。
次の日、えみと【すぃーと】に来て、
こっそり拓さんに昨日のことを話してみた。
えみには話してないから、こっそりね。
「それはお前、仕方ねーよ。
好きになるなって方が難しいだろ。」
拓さんはあっさりとそう言って退けた。
「離れてた時間、意味なくなっちゃうよ?」
早紀さんのいる誠二くんをどんどん好きになる自分に歯止めをかけるために、会わない時間を作ったのに。
「意味がなかったかどうかなんてどーでもいいんだよ。仕方ねーんだよ。人の気持ちなんて、時間がたってどーにかなるってもんでもないんだからな。」
「うん…」
「これからその好きってやつをどうするかは、お前が決めることなんだから。俺は何も言わない。」
厳しい言葉とは裏腹に、拓さんは優しく私に笑いかけてくれた。
拓さんはいつだって私の味方だね。
ありがと。
「なになにー?何の話?新作?」
「今日は拓さんが奢ってくれるって。」
トイレから帰ってきたえみ。
何も知らないえみ。
ちょっと心苦しいけど、言えないよ。
早紀さんがいるのに、誠二くんが好きだって。
「鈴、たまにはうちに泊まりにおいでよ。」
「うん。そうだね。また。久しぶりにおばさんのご馳走食べたいしね。」
また昔みたいに、えみの家にも気兼ねなく遊びにいきたいな。