私のファーストキスもらって下さい。
「―――――…というわけなんだぁ。。」
学校を出て、向かったのは私の頼れる兄貴。
「おい、俺は恋のお悩み相談室か?
お前が告白される度にいちいち相談されてちゃたまったもんじゃねーぞ。」
なんて冷たいこと言うわりには…
「で?その先輩っつーのはどんな奴なんだ?」
ほら、ちゃんと相談に乗ってくれる。
拓さんはほんとにいい人だ。
「真木先輩ね、学校でもすごく人気でイケメンで有名なの。でも、女の子をとっかえひっかえだっていう噂もある人。」
「ふーん、じゃあでも、今悩んでるってことはお前そういう女ったらしありな訳?」
拓さんの言う通り。
そんな噂のある先輩に告白されて悩んでるってことは私がそんな先輩でもいいと思ってるってことになる。
「私、噂ってあんまり信じたくないんだ。だって、信憑性にかけるっていうか…」
噂って、大抵はデタラメが多い。
それは身をもって知ってる。
私も1年の頃、何故か『吹雪鈴は教師にまで色目を使って媚を売ってる』なんてとんでもない噂をたてられたことがあるから。
もちろん、そんな事絶対にない。
本当にデタラメ。
結局、友達に聞いたら、3年生の女の先輩が
そんな根も葉もない噂を流してたらしい。
理由はよくわかんないんだけど。
だから、
「今日話しても、なんかそんな感じに見えなかったんだよね。すごく話しやすいしイケメンだけど気取ってないし。それに…」
「それに?」
「…好きな人いるって言ったら、
言われたんだ。」
「言われた?」
テーブルを拭いていた拓さんが手を止めて、私の方を見た。
私も飲んでいたほうじ茶のコップを置いた。
「今好きじゃなくてもいい、
付き合って好きになってくれれば…って。」
「ほう。」
「そんなこと言われたの、初めてだったしさぁ…ちょっと、考えちゃったんだ。」
「何を。」
「真木先輩と付き合って、誠二くんより好きになれるのかなぁ…って。」
誠二くんを嫌いになることなんてできないし、ならないし、これから先ずっと好きだと思う。
でも、誠二くん以上に好きになれる人がいるかもしれないって…ほんのちょっとだけど、思った。