私のファーストキスもらって下さい。
「仲がいいっつーか、昔からコイツの子守りさせられてたからな。」
「子守りって言わないでよっ。
りく兄のばか。」
先輩の肩をぽかぽか叩く雅ちゃん。
先輩と雅ちゃんの仲が長いものだっていうのがすぐ分かる。兄妹みたい。
ほんとに仲がいいんだ。
何か、私を見てるみたい…
なんて思ってると、
「悪い、遅くなって。」
小走りに誠二くんが走ってきた。
私の隣に来て立ち止まる。
ふわっと香水の香りがして、思わずドキッ。
「あれ?えみは………」
誠二くんが私に話しかけようとして、先輩達に気づいた。
えみは今お会計中。
って、そんなことより…
「もしかして、こちらが佑月の?」
「あ、はい。えみのお兄ちゃんの誠二くんです。」
いきなり紹介されて誠二くんはキョトンとしながら、軽く会釈した。
「俺、真木っていいます。一応吹雪の彼氏させてもらってます。」
先輩はニコッと笑いながら、そう言った。
私の彼氏。
「そっか、君が鈴ちゃんの彼氏くんか。」
あれ?誠二くん、何でそんなに嬉しそうなの?
「イケメンだし、優しそうな彼氏だな。
良かったな、鈴ちゃん。」
優しい笑顔で私を見下ろした誠二くん。
胸がズキッてした。
誠二くんには言われなくなかったよ…
必死に笑って頷いた私。
今涙なんか流しちゃだめ。我慢。
今は早くこの場から離れたい。
今は先輩と話せない。
でも、そんな私の思いはあっさりと打ち砕かれた。
「せっかくだし、みんなでお茶でもするか。」
いつもの誠二くん。
初めてでも、すぐ仲良くなっちゃう明るい性格の誠二くん。
こんな時だけはそんなポジティブな誠二くんの性格にため息をついた。
結局、戻ってきたえみも合流して、カフェでお茶をした。
会話の弾んでいる先輩と誠二くんを見つめながら、居心地の悪さを感じつつひたすらミルクティーを啜っていた。