私のファーストキスもらって下さい。




昨日、感じてしまった事実。


きっと、あれは私の勘違いじゃないと思う。




「昨日ね、先輩ひとり女の子と来てたの。」



「はっ!?浮気か!!」



「拓さん、違うから。落ち着いて。」




拓さん、すぐ熱くなるから困るよ。


私は勘違いする拓さんに雅ちゃんのことを話した。


先輩と雅ちゃんは、お隣さんで幼なじみ。
兄妹みたいなものだって。




「なんか、お前らみたいだな。」




拓さんは腕組みしながら、ぽつりと呟く。


そう。


ホントだよ。


私と誠二くんみたい。



小さい頃からずっと仲良くて兄妹みたいで…




「うん…」




でも、まだ一緒だなって思ったことがあったんだ。それはね…




ーーーーーーーー




昨日の別れ際…




「吹雪、明後日の放課後、空いてるか?」



「はい、大丈夫ですけど…」



「行きたいとこあるんだ。」



「はい、わかりま……」



「りく兄っ。」



私の返事を遮ったのは雅ちゃん。


何となく、ご機嫌ななめな雰囲気。




「何だよ、雅。」



「明後日、テニスの大会…見に来てくれるって言ってたじゃんっ…」



「あー言ってたな。」




約束してたらしい2人。
忘れてた先輩を見上げる雅ちゃん。



“…忘れないでよ。。”



雅ちゃんの見せた寂しそうな横顔と微かに聞こえた本音が、私の心に軽く痛かった。



もしかして…


ふと感じたある思い。




「分かった。ちゃんと、見に行くって。
だから、絶対勝てよ?」




優しい表情で雅ちゃんの頭をポンとする先輩。





「ほんとっ?絶対だよ!」




嬉しそうにちょっと頬を赤くしてはにかむ雅ちゃん。



“もしかして”が“やっぱりそうだ”に変わった。



だって、先輩を見つめる雅ちゃんの視線は…



“恋する視線”



雅ちゃんは、先輩のこと好きなんだよ、きっと。










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