私のファーストキスもらって下さい。





「りく兄っ、来てくれたん……だ……」





先輩の後ろにいた私に気づいた雅ちゃんの声がトーンダウンしていく。




「お前が拗ねるとめんどくさいからな。」




そんな雅ちゃんの様子に気づかない先輩は、雅ちゃんのおでこに軽くデコピン。



デコピンされたおでこを押さえた雅ちゃんのちょっと赤くなった顔は俯き加減。



そんな雅ちゃんを見た私は、とっさに言ってしまっていた。




「先輩っ!ごめんなさい、私今日早く帰らないといけない用事があったの思い出しました!先に帰りますね。じゃあ!」




「あ、吹雪っ…」





言い逃げってこの事だよね。


私は、そそくさと走ってその場を離れた。


なんかベタすぎたかな、言い訳。


ま、いっか。


あそこに私はいるべきじゃないもん。





「雅ちゃん…可愛すぎるよ。」




家まで歩いてる途中、思わずさっきの雅ちゃんの表情を思い出してして呟いていた。



先輩、全然雅ちゃんの気持ちに気づいてないのかな。



あんなにキラキラした恋する視線を向けてるのに。




「ツラいよなぁ…。」





気持ちは痛いほど分かる。



こんなに好きなのに、気づいてもらえない…
でも、気づいてしまったらちょっと怖い。



今の関係がなくなってしまいそうで。



だから今の私がいるんだよね…




誠二くんをただ好きでいる自分。




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