私のファーストキスもらって下さい。





ーーーーーーー




「面白かったですね、この映画。
私、ミステリー系ハマっちゃいそうです。」



「当たりだったな、やっぱり。
俺、この監督の作品好きなんだ。」




次の日の放課後、先輩とデートをした。




誕生日だからって特別なことじゃなく、いつものように映画を観に行って、買い物したり、ご飯食べたり。




楽しい。
でも、何だか心がどこかサワサワする。




「やっぱ、吹雪が彼女で良かった。」




「えっ?」




噴水のある広場でベンチに座って話していると、不意に先輩がそんな事を言った。



ビックリして横の先輩の方を向くと、すごく優しい眼差しで私を見つめられた。



その眼差しに少しドキッとする。



誰かさんの優しい眼差しにちょっとだけ似てるから、困っちゃうよ。





「先輩って見た目だけじゃない人なんだって、よく分かりました。」



「はは、正直っ。」



「ホントです。イケメンで優しくて、でも気取った感じなくて良い意味で自由な人で、そんな人に好きになってもらった人は幸せものです…」



「・・・」




喋ってる途中で俯いてしまった私。
何となく先輩がまだ見つめてるのが分かる。



黙ってしまった私に先輩は、




「吹雪、こっち向いて。」




子どもに言うような柔らかい声につられて、私は先輩な顔を見た。



さっきみたいに優しい表情で、でも眼差しは真剣なのが分かった。




「吹雪は俺が彼氏で幸せもの?」



「えっと……」



「告った時、言ってたよな…好きな人いるって。俺の事…好きになってくれればいいって。」



「はい。」




はっきり覚えてる。
あんな告白初めてだったんだ。





「今、吹雪の好きな人…俺になった?」





いつかはハッキリとさせないとと思ってた。
先輩は答えを待ってる。



“今は好きじゃなくてもいい。”


“付き合って、俺の事好きになってくれれば”



ホントに私は、ひどいと思う。
優しい先輩の気持ちに甘えすぎてた。






























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