私のファーストキスもらって下さい。
「えっと…その…」
きちんと言葉にしようと思うとなかなかまとまらない。
もう答えは出てるのに…
「まだ分かんない?なら、確かめてみる?」
「えっ?」
ぽかんと顔をあげると、先輩はフッと笑って私の手を握った…そして、段々と顔が近づいてくる。
え?
キス…される?
先輩の綺麗な顔が20センチの距離まで来た時、
私は、考えるより先に体が反応していた。
ーーーーーーートンッ。
ピタッと止まった先輩との距離。
先輩の肩を押し返す私の手のひら。
「…い、やです。…ごめんなさい…(泣)。。」
私が泣くなんて間違ってるのに、それでも流れてしまった涙は止まらない。
「泣くなよ。悪かった…ちょっと試した。」
「違うんですっ…私が悪いんですっ(泣)。。」
「分かってたのに…意地悪だったな俺…。」
「先輩は、意地悪じゃないです。
グスッ…いい人過ぎるぐらいで、ず。。」
泣きながら、頑張って言い張る私に、先輩は可笑しそうに笑いだした。
あまりにも笑う先輩の様子に私の涙はいつの間にか止まってしまった。
日が長くなってきたとはいえ、もう辺りは薄暗くなり出していた。
「私、先輩に好きだって言ってもらえて、ホントに嬉しかったです。」
「俺だって、好きじゃなくてもいいから付き合ってほしいなんて言って…我が儘だったな。」
「いえ、あの時の私にはちょっと新鮮でした。
でも、そんな先輩の優しさに私…甘えすぎちゃってました。」
先輩と付き合っていながら、心のどこかで必ず誠二くんを想って…
私が先輩の立場だったら、そんなの寂しいし、つらい。
私ってほんとにバカ。
「いや、俺も“好きになって”って言っておきながら本気で努力できてなかった。」
「そんな…。私、先輩にきゅんきゅんしてましたよ?」
「ありがと。…でも。」
先輩はそこまで言うと、諦めたように笑った。
「でも、好きにはなれない…だろ?」
こんな時、なんて言ったら良いんだろう。
「…ごめんなさい。。」
こんな時くらい、正直な性格じゃなければいいのに。
そしたら、誰も傷付かないで済むかもしれないのに。