私のファーストキスもらって下さい。
「やっぱり諦められないか?片想いの相手。」
「はい。」
先輩に聞かれて、思わず素直に答えてしまった。
「だよな。良い人だもんな。」
「はい。……………って、え?」
誠二くんは、かっこよくて優しくて誰にも負けないくらい良い人…
って、相づち打ってる場合じゃなくてっ!
びっくりして先輩の顔を見ると、笑われた。
「何となく分かった。吹雪があの人を好きなんだって。だってあのショッピングモールでお茶した時も、吹雪あの人のことばっか見てんだもん。」
「あ…」
そう…だったんだ。
私って、そんなに誠二くんのこと見つめてるのかな。…無意識。。
「でも、好きでいるだけしかできないんです私には。彼女がいる人だから。」
いくら好きで好きで好きで、すごく近くにいることが出来ても…両想いになることはできないんだ。
「気持ち伝えないのか?」
「好きって言って、困らせたくないんです。
誠二くん…すっごく優しいから。」
そうそう。
好きなんて言っちゃったら、誠二くんのことだから私が傷つかないようにって気を使う。
そんな感じ、嫌だよ。
「そっか。ツラいな、吹雪。」
「でも、嫌いになんてなれないから仕方ないんです。」
私がはっきりとそう口にすると、先輩はフッと笑った。
「いつかはその気持ち伝えないと、前に進めないぞ。」
「…きっと、そうですよね。」
苦笑いの私に先輩はグッと顔を寄せ、意地悪な笑みを浮かべると耳元で囁いた。
「いつまでも立ち止まってたら、
ーーー………今度はホントにキスするからな?」
先輩の悪魔の捨て台詞に固まってしまった私。
先輩はクスッと笑って“じゃあまた学校で”そう言って帰っていった。