私のファーストキスもらって下さい。





真木先輩とお別れ。



悲しくないっていったら、嘘になるけど。
先輩にこれ以上甘えちゃいけないんだよね。




先輩は本当に優しくてかっこよくて、噂になってたような女ったらしの先輩じゃなかった。



手を繋いだだけの関係だった。



さっきはキスされちゃうなんて思ったけど、きっと先輩はキスなんてしなかったと思う。



先輩はそんな人なんだ、きっと。
私の勝手な思い込みかもだけど。



そんな私には勿体ないくらいの彼氏なのに、
先輩と私のキスまでの距離はずっと遠い。




私のファーストキスは、本当に好きな人にもらって欲しい。




出来ることなら…





「鈴ちゃん?」



「せ、誠二くんっ?…」





ふと頭に思い浮かべた人が何故か今、目の前にいて、ちょっとパニック。




な、なんで誠二くんがここに?





「たまたま近く通りかかって…その…」





誠二くんはそこまで言いかけて止まって、私の座ってるベンチの隣に座った。



そして、何故かジッと私の顔を見つめてきた。




はい、心臓バクバクがハンパない。
そ、そんな見つめられたら、真っ赤になってしまうっ。。





「せ、誠二くん?どうしたの?」




「泣いてないよな?」




「うん。」





泣いてないよ?
なんで、そんな心配そうな顔…してるの?



私が頷くと、誠二くんはホッとしたように微笑んだ。




「さっき、そこで彼氏君に会って…」




真木先輩と?




「その、心配で…」



「心配…?」



「彼氏君が“ 鈴ちゃんに無理やりキスしちゃったから泣いてるかも”なんて言い逃げされて…」



「ええ!?」




何で先輩、そんな嘘をっ!?


キスなんてされてないのに!
されかけたのは確かだけど。



と、とりあえず、誤解を解かなきゃ。



でも、その前に誠二くんが…




「はぁ…良かった。鈴ちゃん、泣いてたらどうしようかと思った~…」




なんて言って頭ポンポンするから、固まっちゃったよ。


なんて、そんなに優しいのかな~。
キュンキュンして苦しいよ。





< 76 / 171 >

この作品をシェア

pagetop