私のファーストキスもらって下さい。
真木先輩とお別れ。
悲しくないっていったら、嘘になるけど。
先輩にこれ以上甘えちゃいけないんだよね。
先輩は本当に優しくてかっこよくて、噂になってたような女ったらしの先輩じゃなかった。
手を繋いだだけの関係だった。
さっきはキスされちゃうなんて思ったけど、きっと先輩はキスなんてしなかったと思う。
先輩はそんな人なんだ、きっと。
私の勝手な思い込みかもだけど。
そんな私には勿体ないくらいの彼氏なのに、
先輩と私のキスまでの距離はずっと遠い。
私のファーストキスは、本当に好きな人にもらって欲しい。
出来ることなら…
「鈴ちゃん?」
「せ、誠二くんっ?…」
ふと頭に思い浮かべた人が何故か今、目の前にいて、ちょっとパニック。
な、なんで誠二くんがここに?
「たまたま近く通りかかって…その…」
誠二くんはそこまで言いかけて止まって、私の座ってるベンチの隣に座った。
そして、何故かジッと私の顔を見つめてきた。
はい、心臓バクバクがハンパない。
そ、そんな見つめられたら、真っ赤になってしまうっ。。
「せ、誠二くん?どうしたの?」
「泣いてないよな?」
「うん。」
泣いてないよ?
なんで、そんな心配そうな顔…してるの?
私が頷くと、誠二くんはホッとしたように微笑んだ。
「さっき、そこで彼氏君に会って…」
真木先輩と?
「その、心配で…」
「心配…?」
「彼氏君が“ 鈴ちゃんに無理やりキスしちゃったから泣いてるかも”なんて言い逃げされて…」
「ええ!?」
何で先輩、そんな嘘をっ!?
キスなんてされてないのに!
されかけたのは確かだけど。
と、とりあえず、誤解を解かなきゃ。
でも、その前に誠二くんが…
「はぁ…良かった。鈴ちゃん、泣いてたらどうしようかと思った~…」
なんて言って頭ポンポンするから、固まっちゃったよ。
なんて、そんなに優しいのかな~。
キュンキュンして苦しいよ。