私のファーストキスもらって下さい。
「はい、では社長への引き継ぎは私が致しますので…ご苦労様でした。」
部署の入口で部長とテキパキと仕事の引き継ぎをする彼女。
それを遠目から何気なく見ていた俺。
話が終わって俺の視線に気づいたのか、さりげなくウインクして手を振った彼女。
それに、軽く笑って返す俺。
コツコツと高いヒールの足音を響かせ、うちの部署を出ていったその後ろ姿から顔を反らし…
小さく息を吐く。
そんな俺、佑月 誠二(ユヅキ セイジ)。
大手と言われる食品会社に勤務する平凡なサラリーマン。
そしてさっき帰っていったバリバリのキャリアウーマン、美条 早紀(ビジョウ サキ)は俺の恋人。
入社後すぐ社長秘書へと抜擢され、その高い能力で仕事をこなしている。
「女王様、いつ見ても完璧だよな。」
「そうだな。」
隣の席の同期、宮下がそう話しかけてきた。
パソコンに目を向けたまま、適当に相槌をうつ。
そんな女王と付き合ってんだよな、俺。
気づけば、早紀と知り合って4年になる。
出逢った頃頃から早紀は、完璧で周りから一目置かれる存在だった。