私のファーストキスもらって下さい。
「鈴ちゃん、いらっしゃーい。」
「おばさん、こんばんは。」
「今夜も沢山ご馳走作るからねー♪」
「はーい。」
相変わらず、えみん家は明るい。
ホッとする。
「鈴、昨日録画しといたお笑いあるから、ご飯まで見よー。」
「うん。」
あれ?
えみ、何か大事な話があるんじゃなかった?
いつも通りのえみにちょっと拍子抜けしながらリビングのテレビでお笑いを見ることにした。
あ、この芸人さん…
『俺、最近ちょっとハマってる。』
って、誠二くん言ってたなぁ。
誠二くんも一緒に見れたらいいのなぁ。
なんて思いながら、えみと2人大笑いしていると…
「ただいまー。」
玄関から誠二くんの声!
ヤバい。誠二くんのあのネクタイ緩めるキュンな仕草が見れちゃうかもっ!
ちょっと期待しながら、ソファーに体育座りして待っていると……………
え……
リビングへ入ってきた誠二くん、と……
「こんばんは、お母さま。」
「あ、あらあら、早紀さん!」
同じく仕事帰りの早紀さんがいた。
一瞬にしてさっきまでのホッとした気分はどこかへ行ってしまった。
「あ、お兄ちゃん遅いー。お腹空いたしー。」
「はいはい、悪かったなぁ。」
テレビを消したえみが愚痴ると、誠二くんは上着を脱ぎながらソファーとへ歩いてきた。
「鈴ちゃん、いらっしゃい。」
「誠二くん、おかえり…。」
せっかく誠二くんのふにゃっとした笑顔が見れたのに…嬉しいのに…
「えみちゃん、こんばんは。」
「あ、早紀さん、お久しぶりですー。」
「お久しぶりねー。
あ、鈴ちゃんもこんばんは。」
「こんばんは…。」
完璧な笑みを向けられて、思わず俯いた。
何で今夜早紀さんも…
タイミング…悪いよ。