ドッグエンド症候群


「杏?どうしたの??」


苦しそうにハァハァと呼吸をする柴犬を真朝が心配そうに見る。


今の真朝にはそのくらいのことしか出来ない。


真朝の声を聞いて新聞を読んでいた賢一郎が声のする方向を向く。


「どうした?」


「あのね、杏苦しそうなの。もしかしてお熱がでたのかな???」


賢一郎が柴犬に近寄り、病状を確かめる。


その異変に気づいた葉子も近寄った。


「これはまさか‥‥‥。」


「え?まさかって‥もしかして例の?」


大人が話し合っているが、まだ子供の真朝には全くわからない。


「ねぇー、パパどうしたの?」


「いや‥なぁ、真朝。杏の鳴き声を聞いたか?」


真顔の賢一郎を見て不思議そうな顔をすり真朝。


「ううん!遊んでるのに杏ワンって言わないの~昨日は言ったのにー。」


その言葉を聞き、両親は2人とも一瞬行動が停止した。


額から大量の汗がにじんでくる。


両親は杏に何が起きているのか理解したからだ。


そしてこれから起きてしまうことも‥。


「どうするの!?この前だと私たちは杏に‥‥。」


「バカなことを言うなよ!‥‥でも。」


「パパとママのお顔こわいよー。」


真朝が半泣きしていることに気がつき、急いで無理やり笑顔をつくる。


「怖くないわよ~、ほらぁー。」


「杏は今苦しそうだから違う部屋でパパと遊ぼうか?」


優しい顔に戻って安心したのか、笑顔になる真朝。


両親がとる行動はもう決まっていた。


「じゃあ、葉子。わかってるな。」


「えぇ。わかってるわ。」


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