ドッグエンド症候群
犬が鳴いたとは思えないようなハッキリとした口調で鳴いた。
いや、もう喋ったと言った方が正しいだろう。
まるで心の中にため込んでいた黒いものを吐き出すかのような。
冷たく、低く、そしてとても暗い声だった。
「え?‥‥ま、マック???何を‥。」
由利は状況がのみこめないようで、顔の筋肉がひきつっている。
そしてやっと自分がおかれている立場を理解したのか頭をかきはじめた。
「いやいやいやいやいやいやいや!!ははっ!マックがそこまでバカ犬だとは思わなかった~、見損なったわよ!」
そう叫びながら台所から何か光るものを出してきた。
「こんなクソなダメ犬だとはね!そんな犬なんか生きてる意味がない!!死になさい!」
由利の右手に握られていた光るものは魚をさばくための包丁だった。
それを勢いよくパグの体に突き刺す。
何度もなんども、動かなくなってもパグの体に突き刺し続けた。