さえちゃんと真美
立場
「今日から、私ではなくなったんだわ…。」

どこか自分でも“へんちくりん”な気持ちで真美は胸をなで下ろした。

今日から、真美は『いじめられっ子』から『いじめっ子』の仲間入りなのだ。
何故なら、他の子を『いじめられっ子』にしたから。



嘘みたいだった。

昨日まで自分をいじめていたクラスの女の子たちも、まるで何もなかったかのように真美を受け入れた。

本当に、嘘みたいだった。

昨日、ひどい事を言ったあの子ですら、今日は「真美ちゃん、」と話しかけてくれる。

(やっぱり私は『いじめられっ子』ってわけでもなかったんだわ…)

真美は心の中で、自分の昨日までの『いじめられっ子』“だった”立場をサッと立ち退け、納得した。

(今日からはあの子、昨日まで一緒にしゃべっていた“あの子”が…“あの子”が『いじめられっ子』。私がしたんじゃない。あの子が嫌われていたから。あの子“さえちゃん”が『いじめられっ子』になったんだわ!)
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