幸せをもう一度
私は
意を決して

まだ私の唇に重なっている海十の唇を

思いっきり噛んだ。




口の中に血の味が広がり

海十は少し顔を歪めながら

私から離れた。




「なにすんだよ」


はいっ?

それはこっちのセリフでしょ。


「そっちこそいきなり何すんのよ」


私が怒鳴り返すと

「あ~。ごめんって。

 いきなり過ぎたよな。

 まぁ。とりあえず座りなよ。
 飲み物入れるから。」


「いい!
 もう帰るから。」


そう言うと海十は血相を変えて私の前に来た。



「どいてよ」


「嫌だ。
 ちょっと飲んでゆっくりするぐらいいいだろ」


多分飲むまで帰してはくれないだろう。


私は諦めて
ドリンクを飲んでさっさと帰ることにした。


「分かった。
でも、飲んだら帰るからね。」

私が断念すると
海十は喜んで
鼻唄をしながら台所へ消えて行った。


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