シュガー*シガレット*シークレット
“私”って、何なんだろう。

本当の“私”は、どんな人だった?

もう、塗り固めてきた作り笑いに覆われて、思い出せない。



「だから、もう、どうでもいいんです。嘘ばっかりの優等生の私なんて、いらないから」

「………」



1度だけ目もとをブラウスのそでで拭って、私はそう言い切った。

それまで黙って私の話を聞いていた南先生が、ふぅっと、息を吐く。



「……だから、こんなとこで授業さぼって、一般的に“未成年はやっちゃいけない事”である、喫煙をしようってか」

「………」



たぶん先生は、呆れているんだろう。

馬鹿みたいだって、思っているのかもしれない。

……どうせ、この人には私の気持ちなんてわからない。

普段から言いたいことを言えて、そのうえで人がまわりに集まっている、この人には。

……私には、何の個性もない。

ただ、まわりの期待を失望に変えないように、嫌われないように、生きているだけ。


そこで私は無理やり、自嘲気味に笑みを浮かべた。
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