シュガー*シガレット*シークレット
「だからおまえもさ、まわりの人間なんか、むしろ利用しちまえ」

「え、」

「言っとくけどな、今おまえがいる優等生ポジションって、結構便利だからな? いい行いしかしないって思われてるから、教師らだって簡単に言うこと信じるし」

「………」

「──大丈夫。俺が、おまえの葛藤を知ってるよ。……穂積 紗和が生きている世界は、自分が思ってる以上に、もっとずっと広くて、明るかったりするから。こんなとこで落ちぶれていいほど、おまえはつまんない人間じゃねぇよ」



南先生は、ニッと笑って。私の頭に、やさしく右手を乗せた。



「……ッ、」



その瞬間。それまで堪えていた涙が、嘘みたいにボロボロこぼれてきて。

……この人に、つまんない人間じゃないよって言ってもらえることが、こんなにうれしいことだなんて、思わなかった。


本当は、誰かに『大丈夫』って、言って欲しかったの。

誰かに、私のこんな汚くて弱い部分を、知っていて欲しかったの。



「大丈夫、大丈夫」

「っう……っひっく、」



ぽん、ぽんと先生の大きな手が、やさしい言葉と一緒に降ってくる。

私は、涙が止まらなくて。

差し出されたハンカチを素直に受け取り、ただ心の中で、何度も何度も、ありがとうを繰り返した。
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